グラシアーヌ・フィンズィ Graciane FINZI

biographie

 

モロッコのカサブランカで音楽家の家庭に生まれたグラシアーヌ・フィンズィは、生地のコンセルヴァトワールから10歳のときにパリ音楽院に進み、ハーモニー、対位法、フーガならびに作曲の賞を獲得した。1979年以来、パリ音楽院の教授をつとめている。フランス著作権協会のジョルジュ・エネスク賞(1989年)をはじめ、フランス学士院のシャルチエ賞(2006年)など数々の賞を受賞している。また2001/03年には、国立リル管弦楽団のレジデンス作曲家に選ばれている。これまでに書かれた100曲をこえる作品には、7曲のオペラをはじめとして、ピアノやチェロのための協奏曲などの管弦楽曲のほか、室内楽や声楽作品も多数あり、世界各地で演奏されている。

グラシアーヌ・フィンズィの楽器の扱いは、ソロであれオーケストラであれ、ダイナミズムや音色・リズム感といった点で、それぞれの楽器の独自性が発揮されるとともに、さらにはそれらを組み合わせたグループのユニットとしてのまとまりが企図されている。特徴的な音響的階層の多重性が巨大なハーモニーを形成し、そこに醸し出される思いがけない色調と、調性をこえた和声的・半音階的進行といった現代的手法により、音符と音符のあいだに引力の極が構築されている。

このようなことから、グラシアーヌ・フィンズィの音楽は、けっして抽象性のみにおちいることなく、人生における人間としての奥深い感情に即応した直接的表現でありながら、音楽そのものが内包する領域へと導かれるためのよきガイドとなっている。かの女はジャンルを超越することに躊躇せず、音楽ではフラメンコ歌唱やタンゴを、声楽作品のテクストを生地モロッコをはじめとするアフリカやアラブに求めるなど、さまざまな異なる要素を作品のなかに取り入れている。

また、教育にも情熱をそそいでおり、多数の子供が参加する『魅惑的なキーボード』『子供が旅をするとき』のオペラや、ダンス・歌・ヴィデオ・録音・民族楽器などを組み合わせたスペクタクル『たぶん、向こう側で』『アフリカ娘』を手がけ、フランス国内の諸都市で上演されている。

グラシアーヌの音楽は、一種の新しい基点から生み出された芸術の再創造であり、世界の創造の起源であり、べつの音楽のコンセプトが生み出されるマグマのエネルギーであり、分かりやすい響きをもったコンパクトな明快さで観客をひきつけている。

グラシアーヌ・フィンズィの作品は、これまでにパリをはじめとするフランス国内、ロンドン、ローマ、ニュルンベルク、ヘルシンキ、モスクワなどのヨーロッパのみならず、ニューヨーク・ヴァンクーバー・リオデジャネイロなどでも演奏されている。